お芝居で覚える補聴器測定方法

JISで定められた補聴器の測定方法は丸暗記しようとしてもなかなか覚えられません。どうにか良い方法は無いかと考えて、お芝居の台本にしてみました。補聴器役と測定係役にわかれてクラスメイトと演技をしてみて下さい。役を交代するのも忘れずに。自然とどういう測定なのかがわかってくると思います。それでは張り切ってどうぞ!

『新人補聴器の僕が本気出したら結構すごかった件』


補聴器「う、うーん…。はっ!こ、ここは?」

測定係「目覚めたようだな。今から君の能力を調べさせてもらう。大丈夫だ。手荒なことはしない。JIS(日本工業規格)に定められた測定をするだけさ」

補聴器「ジ…JIS。そうか。ぼくは一人前の補聴器になるために測定をお願いしたんだった!がんばらなきゃ!よろしくお願いします!」

測定係「いい挨拶だ。じゃあ早速測定を始めようか。君は最新のデジタル補聴器だね。出力が大きくなりすぎない機能や、自動で音質を補正する機能が付いているようだけど、ここでは一旦それらを全てオフにしてもらうよ。真の実力を知りたいからね」

補聴器「はい!出力制限装置を切ります!音質調整器もフラットの状態にします!」

測定係「そうだ!つまり君はいま丸裸だ!!これを【規準の状態】という!覚えておけ!」

補聴器「はい!丸裸!これが規準の状態なんですね!」

測定係「そうだ。ではまず、君がどれだけ強い音を出すことができるか調べさせてもらおうか。この小部屋に入って2ccカプラにしっかりと口を密着させるんだ」

補聴器「こ、これがカプラ。ようし、【利得調整器を最大】にして精一杯強い音を出すぞ!」

測定係「準備ができたようだな。では、与えるのはこの音だ!90dB純音!」

補聴器「きゅ!90dB!!カラオケ並の騒音じゃないですか!!そんな強い音をさらに増幅しろだなんて!」

測定係「君がどれだけ強い音を出すことができるかを知るためには入力も強い必要があるんだよ。周波数は200Hzから5000Hzまで変化するからな!じゃあいくぞ!叫べ!」

補聴器「ぴいいぃぃーーーー!!!」

測定係「素晴らしい。その小さなボディからこのような出力が得られるとはな。これが君の【90dB最大出力音圧レベル】略して【OSPL90】だ!覚えておけ!」

補聴器「はあはあ。こんなに出力が出せるなんて自分でも知らなかった。自分の出力の限界、それが90dB最大出力音圧レベルか」

測定係「今の結果をグラフにしたものを【周波数レスポンス】というぞ。このグラフのうち1000Hz、1600Hz、2500Hzの値の平均を【高周波数平均値(HFA)】と呼ぶ。【HFA-OSPL90】と覚えてくれ

補聴器「うっ、沢山用語が出てきて覚えにくいけど頑張ります!」

測定係「では次の測定だ。今度は君の利得、つまり増幅させる力を知りたい。【利得調整器は最大】のままでこの音を増幅させてみるんだ!50dB!」

補聴器「あ!50dBですね!それならかなり強められるはず!ぴいいぃぃぃー!」

測定係「素晴らしい。最高で100dBほど出ているからもとの50dBからさらに50dB増幅させることができているようだ。この50dBが君の【最大音響利得】だ!覚えておけ!」

補聴器「やった!たくさん増幅できたぞ!でも、そろそろ利得調整器最大は疲れてきました」

測定係「そうだろう。ではここからは君が実際に使われる場面を想定した測定をしよう」

補聴器「はい!ぼくの自然体の能力ってわけですね」

測定係「そういったところだ。最初に計測した【HAF-OSPL90】から77dBを引いた値になるように利得調整器を下げてもらうよ。これを【利得調整の規準の設定】と呼ぶ。入力する音は60dBだ」

補聴器「わかりました!(利得調整器をちょっと下げて)、ぴーーー」

測定係「うむ!それでよい。今の結果が【規準利得レスポンス】だ。覚えておけ」

補聴器「はい!規準利得ですね……えっとでもさっきも規準の状態っていうのがあった気が」

測定係「良く気付いた。規準利得は利得調整器の話で、規準の位置は音質調整器や出力制限装置の話だから混同しないようにな。これで測定は終わりとする!では、みんなの役に立てるようにがんばれよ!」

補聴器「はい!ありがとうございました!」

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・この記事は『JIS.C5512.:2015』をもとに書いています。
・最大音響利得、利得調整の規準の設定、規準利得すべて高周波数平均値(HFA)での計測となりますが、このお芝居では割愛してあります。
正しくは↓
http://kikakurui.com/c5/C5512-2015-01.html